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閑話休題 2、失われた時を求めて

5か月間の検査結果待ち、さらに手術の順番待ちの間にはもちろん本もたくさん読みました。

特に印象深かったのはプルーストの『失われた時を求めて』を読了したことです。



『失われた時を求めて』はそのタイトルのSFチックなイメージとは違い
難解な純文学作品として有名であり、ギネス認定の世界一長い小説でもあります
どのぐらい長いかをWikiで確認すると日本語訳で400字詰め原稿用紙1万枚ほどだそうです。
読み始めたのは乳がんの可能性を指摘される1年半ほど前なのですが、
前年の7月にSNSで『失われた時を求めて』の読書マラソンに誘われまして
誰かと競いながらであれば、この大長編への挑戦も楽になるだろうと
他の本の合間合間に、この大長編への挑戦を始めていたのでした。

がんかもしれない……
そう思うと、どうしても色々と考えてしまいます。

私は小さい頃から、本が大好きでした。
小学校に入学して、学校図書館に初めて入った時、思ったのは

(ここに並んでいる本を、全部読んでいいなんて!
私、卒業するまでにここにある本を全部読もう!)

でした。
しかしほどなく、自分の読書スピードでは
図書館の本をすべて読み切るなんて無理だと気づきます。

(世界中の本を読みつくしたい)

そんな夢も不可能だと思い知ります。
本の冊数は無限に近いほどあって、私が死ぬまでに
地域図書館の本を全部読み切ることすら不可能なのだと。

それでも、死ぬ前に

(ああ、あの本を読み切ってない。どんな結末だったんだろう?)

と思いながら死にたくはないとずっと思っていました。
だから

(これはどうやら、がんらしい)

そう思い始めてから『失われた時を求めて』を読むペースもぐんと早くなりました。
がんであっても、死ぬとは限らない。
乳がんの死亡率は今やずいぶん低い。
それでも、女性の死亡原因の上位に食い込む乳がん。

プルーストは病弱な身体を抱えて、途中で絶筆になるかもしれないという恐怖を感じながら
『失われた時を求めて』を執筆していたと言われています。
私はプルーストほど追い詰められてはいませんが、確実に読み切りたい。
病院の待ち時間や、移動時間を繋げて、4月が終わるころついに最終巻を読む終えました……。

『失われた時を求めて』の感想は、読んでもらうのが本当に一番なのではないかとですが
人は誰も死なずに永遠に生き続けるということなのではないかと思っています

人は二度死ぬという まず自己の死

そしてのち 友人に忘れ去られることの死

それなら永遠に

ぼくには二度めの死はないのだ

(彼は死んでもぼくを忘れまい)

そうして

ぼくはずっと生きている

彼の目の上に 



これは萩尾望都『トーマの心臓』
の冒頭にあった登場人物の遺書なのですが、
『失われた時を求めて』はまさに
人は誰かの中で永遠に生き続けるということを描いた物語でした。

思い出の中で人は誰も死なないのです
時間はすべて同時に存在していて、誰かの中でみな永遠に生き続けるのです…

プルーストの『失われた時を求めて』はその感覚を
立体的に実感を伴って体感できる物語で、読了後の感動はまさに読んだ人ならではのものです。
本当に、すごいとしか言えない大河小説。
そんな物語をいつ死ぬかわからない弱い体を抱えながら書き続けたプルースト。

(死ぬかもしれない……)

そんな心境だった私に、深く強く響いた物語でした――。

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