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そして転院へ

翌日、今までの男性医師と交代した常勤の先生は
ちょっと可愛いメガネっ娘の女医さんでした。

「触診でもマンモグラフィでもエコー(超音波)でも原発が見つからず
PETの集積も右リンパだけ。
考えられるのは2つです。
血液性のがんである悪性リンパ腫、あるいは……」

オカルト乳がん…」

言葉を遮るように呟くと、先生が微かに微笑みました。

「よくその名称をご存知ですね」

「さすがに気になったので自分でも調べてみました。
Occult Breast cancerですよね」

先生が大きく頷きます。

「日本語では原発不明乳がんとか潜在性乳がんとか呼びますね。
それで、森田さんのご希望はご実家のある
小田原の病院にってことでしたけど、これはすごく珍しい症例で……」

「ええ、そうですね。私もあとで思いました。
利便性がどうこうって場合じゃなかったですね」

「オカルト乳がんはめったにないものなので、私も経験がなくノウハウもありません
悪性リンパ腫だとしてもこの病院には専門医がいないんです。
大きな病院と言うより研究施設を兼ねた病院でなければ対応できないでしょう」

「研究施設を兼ねた病院と言うと、大学病院とか国立のがんセンターとか?」
「そんな感じです」

「うーん、実家に一番近い病院ならT大学附属病院、
自宅に近いで考えるならS大学の付属病院……」

「どちらも悪くはないですが、私はここがいいと思うんです」

そう言って先生はあるがん専門病院の名前をあげました。
 
(へえ、すごい……)

咄嗟にそう思いました。

その病院はがんの研究治療施設として日本でトップクラスです。
しかも乳がんの臨床経験数は日本一だというのも、
この2カ月ほど調べ続けてきた中で覚えた知識でした。

この手の病院を病院からの提案で紹介されることなんてめったにないと思いました。
だって、聞いたことがありません。
知り合いのがん患者はみんな、
コネを使って無理矢理紹介状を書いてもらったとか話していたのに。

「いかがでしょう?」

と先生。
私は大きく頷きました。

「はい。ぜひそこでお願いします」

PET検査の結果は…

PET検査の結果は今の担当の先生に送られるものだったので自転車で病院へ。

「集積があるのが右のリンパだけなんだ」

と先生。
PET検査は1センチ以上のがんなら発見できると言われているけれど、
それでも見つからないがんもあるとのこと。

「PETって炎症がある箇所にも集積するんですよね?
やっぱりテニス肘じゃ……」

「テニス肘にしては集積が異常だ。細胞の顔つきも悪い。
これでがんじゃなかったとしたら、膠原病ぐらいしか考えられない」

膠原病は膠原病で大変だけど、
これで膠原病ってオチもそうそうなさそうですね。

「造影剤のないMRIじゃ不鮮明でわからなかった。
あとはリンパを取りだすことになりそうだが、どこの病院にする?」

「あ……う~ん、入院するんだったら私、
実家の近くの病院の方がいいかなと」

「実家どこ?」

「小田原」

「小田原? う~ん……」

「でもあの、今、本当にがんかどうかもわからない状態ですし、
確定診断の検査まではここでやってもらうってわけには……」

「僕は非常勤なんだよ。そういう手術は常勤の先生じゃないとできない。
担当をその先生に交代してもらうから」

これはすごく珍しいケース、難しい症例だと強調する先生。
そういえば最初の診察で

「このリンパでがんを発見なんていうのは
僕の医者人生に一度あるかないかってぐらい 珍しい症例」

だっておっしゃってましたもんね。
そこまでに珍しいケースのものを
地方の病院でって言うのは、考えてみれば間抜けな話かもしれません。
というか、しきりに「他の病院を紹介する」って言われていたのは
この病院では対応しきれない
レアケースだからってことだったのでしょうか?

初めてのPET検査 その2

PET検査はPETスキャナーという
ドーナツ型の機械の中にぐいーんと入って
断面を取っていく感じの検査です。
CT検査やMRI検査をイメージしていただければと。
まあ私、CTとMRIの違いもあんまりちゃんと判ってませんけどw
天井にお花の絵が描いてあって、音楽が流れていて、
やっぱりセレブ向け(?)は違うなあと感心している間に
検査が終わりました。30分ぐらい?
あ……ペットボトルの水、あんまり飲まなかったや。
勿体ないな――。

「あんまり飲まなかったんで、
この水貰って帰ってもいいですか?」


「ダメです。
放射線区域内の物を外に持ち出してはいけません

貧乏人ですみません。

お会計をして帰宅です。
お会計、まあかかるだろうなあと思ってました。
保険が効いている普通のMRIとかマンモグラフィとかでも諭吉1枚弱行きますからね。
諭吉2枚ぐらいかなー。
いや、念のため3枚持っていこうと3枚持っていました。

29180円です

わぁい!

念のため3枚は正解でした。

(健保効いててこれかぁ)

お財布の中には既に1000円札が3枚ぐらいしかありません。
出費の痛さに
有名シェフ監修の検査施設併設レストランでランチするのは諦めました。
そして私はPET検査を終えたばかり。
被曝しています。

被曝している状態なので、1時間ぐらいは人込みに入らないでください。
幼児や妊婦さんには今日1日近寄らないようにしてください

息子は既に中学生なので問題ないですが、
乳幼児のお子さんがいる女性がPET検査受けたりすると大変そうですね。

(いや待てよ。目の前で妊婦さんが突然産気づいても駆け寄っちゃいけないんだよね?
幼児が車に引かれそうになっても抱き上げて助けちゃいけないのかな?)
↑誰もそんな事は言っていないw

そんなしょうもない妄想もしていましたが、それよりひとつ問題が……

(こんな東京のど真ん中で出て行かされて
人込みに近づくなって言われても……)

電車で帰宅するとなれば、どうしても人込みの中になります。
仕方ないので喫茶店を探して人気のない隅に席を取り、本を開きました。
しばらくしたら喫茶店は混雑し始め、私の隣の席にも人が。

(来るなってわけにもいかないし、男の人だから大丈夫だよね?)

ちょっとドキドキしながらもとにかく1時間そこに居座り、電車に乗って帰宅しました。

初めてのPET検査 その1

予約が混みあっていたので、
PET検査を受ける段階で既に4月、桜が舞っていました。

PET検査はがん細胞が正常な細胞に比べて
3~8倍のブドウ糖を取り込むという性質を利用した検査です。
食事療法でがんをやっつけるとかやっている人で
糖質制限をする人がいますが、
まあそういう意味では理屈は間違っていないかなと。
PET検査の場合は
このブドウ糖にポジトロン核種(陽電子放出核種)という
一種の放射性物質を合成したもの(FDG)を注射して
このブドウ糖がどこに集中するかでがん細胞の位置を調べる検査。
つまり体内に放射性物質をわざわざ入れて行う検査です。
検査の際には5時間前から絶食です。
食事を1回抜きましょうぐらいな話なので、
あまり意識しすぎなければ、つらい事ではありません。

検査施設について問診表等を提出したら
検査衣に着替えます。

「薬が全身に回るまで待ち時間あるんですよね?
本、持ち込んでいいですか?

「放射線管理区域内に私物は持ち込まないでください
安静室にはテレビもあるんでそれで我慢して下さい

仕方ないので本はロッカーに戻して、手ぶらで放射線管理区域へ。
静脈にFDGを注射
5分ぐらいかかる長い注射(ゴム管と繋がってる)です。
薬が全身に回るまで1時間安静にしていなくてはいけないので安静室へ。
眠ってもいいということで、リラックスできるようにということか個室でした。
室内にはリクライニングチェアとテレビがあります。
喉が渇いた時用にとペットボトルのミネラルウォーターもいただきました。
リクライニングチェアに座ります。

(!? なにこれ?)

まるで包まれるような……
今まで座った椅子の中で最高の座り心地。

(いやあ……椅子で眠るなんて厳しいなって思ってたけど
世の中にはこんなすごい椅子もあるんだなあ)

この検査施設では人間ドッグも行えて、
宿泊で検査をする人は検査後、
併設されている有名シェフ監修のフレンチレストランで食事ができるそうです。
なんて優雅な!

(もしかしてここってセレブが来たりする施設?
きっとこの椅子も高級品なんだろうなあ。
ちょっと得した気分)

ミネラルウォーターを一口二口飲んでテレビのリモコンを押してみます。

(面白そうな番組ないや)


テレビを消して座り心地の良すぎる椅子に身を任せ目を閉じると
私はいつしか眠りに落ちていました。

「……森田さん」

耳元で声をかけられてはっと目を開けます。
声は椅子についている耳元のスピーカーから出ていました。

「時間になりましたので安静室から出てきてください」

私は体を起こし、ペットボトルの水を一口飲んで安静室から出ました。

造影MRIと喘息

造影MRIと喘息の関係をググってみます。
造影MRIで副作用が起きる可能性は軽微なものも含めて1~2%。
ところが喘息患者の場合は可能性が10倍に跳ね上がります。
つまり10~20%
これは蕁麻疹のような軽微なものを含めなので、
心停止だけを調べてみると通常は1万人に4人以下。
喘息なのでこの10倍の頻度となると、1000人に4人以下。
つまり0.4%以下
このぐらいなら行ってもいいような気もしますが
検査のためだけに死亡リスクがあるのはということで
喘息患者に造影MRIは禁忌となっているようです。

案の定というか、通常のMRIの画像は不鮮明で何も判明しませんでした。
相変わらず痛いマンモグラフィもご同様。
まずはPET検診を受けてからという事になります。

そして紹介してもらいたい病院を考えなくてはなりません。
同居家族は夫と当時中学生の息子。
夫は多忙だし、中学生の息子があてになるとはあんまり思えません。
となると実家の母や妹に頼ることになります。

「やっぱり実家の近くの病院だろうなあ」

仕方ないので、この段階で母に状況説明する事にしました。
さすがに神妙に話を聞いている母に電話で説明して
造影剤のくだりになった途端、母さらっと。

「あら、造影MRI? 私も受けたわよ」

「え? 待って、お母さん私よりひどい喘息だよね。受けられたの?」

「喘息? そんな余計な事言わなかったわよ。
だって症状ないし」

「毎日薬使ってるじゃないの!
そういうの喘息って言うの! 大丈夫だったの?」

「検査のあと蕁麻疹が出てね。
病院で大騒ぎになって半日病院に入院したの。
言ってなかったっけ?」

あー、そういえば事後報告でそんな話を聞いた気も。

とりあえず心停止の副作用じゃなくて良かったとしか……。

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